ドライブ中にブレーキを踏むたびに「キュルキュル…」と聞こえてくる異音。
気になるものの、停車後には消えてしまい、「すぐには問題なさそう」と感じてしまうかもしれません。しかし、その音の原因はベルトの緩みや摩耗によるものかもしれず、放置するとエンジンに関わるトラブルや、思わぬ故障につながるリスクがあります。
この記事では、「なぜキュルキュル音がするのか」「応急的にできる対策」「修理にかかる費用目安」などをわかりやすく解説。
音に気づいた際には冷静に対応できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
応急処置・初期対応(すぐ試せる対策)
ブレーキを踏んだときにキュルキュル音が鳴ると不安になりますが、すぐに整備工場へ持ち込めない場合でも、自分で確認・対処できるポイントがあります。
ここでは応急的にできる初期対応を紹介します。
ファンベルトの状態を目視でチェックする
ボンネットを開けて、ファンベルトの状態を確認してみましょう。
ゴムにヒビが入っていたり、毛羽立ち・削れが見られる場合は劣化が進んでいます。
また、ベルトを軽く押してみて、張りがゆるすぎないかも確認します。
一般的には1cm程度のたわみが適正ですが、それ以上緩んでいる場合は調整や交換が必要です。
ボンネットを開けて以下のポイントを確認しましょう。
- ベルト表面にヒビやひび割れがないか
- 摩耗や毛羽立ちが見られないか
- たわみが1cm以上になっていないか(適正たわみは約1cm)
- 張り具合に左右差がないか
ベルトや周辺の汚れを掃除する
ベルトとプーリーの間にほこりや油分が付着していると、滑りやすくなり異音の原因になります。
布やブラシを使って軽く汚れを落とすだけでも、音が軽減される場合があります。
ただし、ゴム用のクリーナーなどを使用する際は、車用として安全性が確認されている製品を選びましょう。
異音の出るタイミングを記録する
音がいつ、どのような条件で鳴るのかを記録しておくことも重要です。
たとえば「朝一番のエンジン始動直後」「雨の日」「急ブレーキをかけたとき」など、音が出るタイミングによって原因が絞り込みやすくなります。
整備士に相談する際にも、こうした情報は非常に役立ちます。
以下のような場面に注目しましょう。
- エンジンをかけた直後(特に朝や寒い日)
- 雨の日・湿度の高い日
- ブレーキを軽く踏んだとき
- アクセルを離した直後
自分で無理にベルトを調整しない
ベルトの張り具合を自分で調整しようとするのはおすすめできません。
張りすぎるとプーリーやベアリングに負荷がかかり、さらなる故障の原因になります。
状態を確認するだけに留め、調整や交換は整備のプロに任せましょう。
修理・整備にかかる費用目安
キュルキュルという異音の原因がファンベルトやその周辺の部品にある場合、放置せずに早めに整備・修理を行うことで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
ここでは、主な修理内容とその費用の目安を解説します。
ファンベルトの張り調整:3,000円〜5,000円前後
異音の原因がベルトの緩みによる場合は、張りの調整のみで済むことがあります。
この作業は比較的簡単なため、整備工場やカー用品店などで3,000〜5,000円程度が相場です。
点検と同時に対応してくれることも多く、費用を抑えて対処できる可能性があります。
ファンベルトの交換:8,000円〜15,000円程度
ベルトが摩耗していたり、ひび割れが進行している場合は交換が必要です。
部品代と工賃を含めて8,000円〜15,000円程度が一般的な価格帯ですが、車種によってはさらに高額になることもあります。
交換にはエンジン周辺の脱着作業が必要になる場合もあり、整備内容によって費用に幅が出ます。
複数ベルトの同時交換:20,000円〜60,000円程度
車種によっては、ファンベルトのほかにパワステベルトやエアコンベルトが同時に使われており、一体型の構造になっている場合もあります。
その場合、異音の元がどのベルトか特定しにくいため、複数のベルトをまとめて交換することもあります。
費用は20,000円〜60,000円前後と高くなりますが、将来的なトラブルを防ぐためには有効な選択肢です。
ディーラーでの修理はやや高額になる傾向
ディーラーで修理を依頼する場合は、純正部品の使用や専門的な点検が行われるため、費用は整備工場に比べてやや高めです。
ただし、保証対応や車種特有の対処に精通しているため、信頼性は高く、特に新車や保証期間内であればディーラーでの点検がおすすめです。
放置のリスク—異音を無視してはいけない理由
ブレーキを踏んだときに聞こえるキュルキュル音を「よくあること」と軽く受け止めて放置してしまうと、思わぬトラブルや高額な修理費用につながる可能性があります。
ここでは、異音を放置することで起こりうる主なリスクをご紹介します。
ベルト切れによる走行不能
ファンベルトはオルタネーター(発電機)やウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーなど、エンジンの周辺機器を動かす重要な部品です。
このベルトが劣化したまま使用を続けると、最終的にはベルトが切れてしまう恐れがあります。
ベルトが切れると発電ができなくなり、バッテリー切れによるエンジン停止、冷却機能の停止など、走行不能に陥ることもあります。
エンジンへの深刻なダメージ
ファンベルトの滑りや劣化により、エンジンの冷却が不十分になった場合、オーバーヒートや潤滑不良が発生することがあります。
これを放置するとエンジン本体にダメージが及び、数十万円単位の高額な修理が必要になる可能性もあるため、軽視は禁物です。
他の部品への負担と連鎖的な故障
ベルトが適正に動作していないと、プーリーやテンショナーなど周囲の部品にも余計な負荷がかかり、連鎖的な故障を引き起こすことがあります。
最初は小さな異音でも、無理な力がかかることで部品同士の摩耗が進み、複数の部品交換が必要になるケースも少なくありません。
重大事故につながる可能性も
ベルトの異常が原因でエンジンが突然停止したり、ハンドル操作やブレーキに影響が出た場合、最悪の場合は交通事故につながるリスクもあります。
異音は車からの「助けて」のサイン。
安全運転のためにも見逃してはいけません。
まとめ|早めの対応で安心・安全を確保しよう
ブレーキを踏んだときに聞こえるキュルキュル音は、軽微な異音に思えても、車の重要なパーツであるファンベルトの劣化や不具合が原因であることが多く、放置することで重大なトラブルへと発展する可能性があります。
ファンベルトの点検や張りの調整は比較的手軽に行える作業であり、費用もそこまで高額ではありません。音に気づいた時点でベルトの状態を確認し、異常があれば早めに整備工場やディーラーで点検・修理を受けることが、安心して車に乗り続けるための第一歩です。
「そのうち直るかも」と様子を見るのではなく、異音は車からのサインと捉えて、迅速に対応しましょう。少しの気配りが、大きな故障や事故を未然に防ぎ、安全で快適なカーライフを守ることにつながります。